蛍火


「―― 行くな!!」

ふいに、後ろから力強く腕の中に抱き締められて、その言葉の意味に戸惑い幸彦は腕の中で思わず体を強張らせる。

「……だ、旦那様?」
「お前まで消えてしまう、そんな気いした。あの蛍みとったら……」
「僕の行くところはどこにもありません、あそこが僕のうちやとゆうてくれたんは旦那様やないですか?」

蛍火(仁x幸彦シリーズ)

いつも堂々としている仁の口から聞く初めての弱音。
こんな風に彼も自分との事で、ふいに不安な気持ちになることがあるのだと知らされて幸彦の胸が騒ぐ。

「一回あるやろ?だまって家を出て行ったこと」
その言葉に、チクリと胸が締め付けられた。それを仁の口から言われると幸彦も辛い。

主人と使用人、男同士の道ならぬ関係。好きになってはいけない相手だと思えば思うほど仁を恋慕う気持ちは強くなっていった。自分だけが仁のことを好きになっていくようで怖かった。何時か来る別れに常に怯え、仁の口からそれを告げられる前にと一度、あのうちを逃げ出してしまったのは、二人が躯の関係なってしまってからしばらくしてからのことだ。

後 記
時は大正末期の大阪。孤児の自分を拾ってくれた仁のことを慕い、主人と使用人という一線を超えた後もけして多くを望まず、ただ一途に仁を思い続ける幸彦。しかし、二人の間には目に見えずともいまだ立ちはだかるものが多すぎて……。


今回また、BXB Searchさんの絵師企画で「nil admirari」の六平(ムタカ)様にこのシリーズでは4作目となるこの話の挿絵を描いていただきました。

ほう……

なんて、素敵なのでしょう……

我が家の健気受け代表格ともいえるシリーズモノのこの二人、ビジュアル化したものをいつか見てみたいと思っていたのですが……こうやってその姿拝めて、お母さんは嬉しいよ(ノД`)

出来あがったイラストを拝見した時私、実際に本を作ってこのイラストをそのまま、表紙にさせていただきたいと真面目に考えましたよ、うーん。

毎回思いますが、ビジュアル化の夢をこんな形で、かなえていただけるチャンスを下さったBXB Searchさんには毎度毎度足向けて寝られません。

六平様、忙しいところを色々お気遣いくださり、そしてこのような素敵な二人に仕上げてくださって本当にありがとうございました。あぁ、私しあわせだ〜〜

ニル・アドミラリ



home