いつか貴方に逢う日まで

Vol.13


 男の仕事は結局あの後ミスを全て修復するするのに思って た以上の時間を要したようだ。そのあいだ部屋に来たのは食事の時間だけ、それ以外の理由で無駄に 足を運び、突然部屋に訪れると言うようなことは一度も無かった。
多分仕事の方がかなり忙しく直弥を構う余裕などなかったというのが一番もっともな理由だろうが、それ以上にあまりこちらばかりに気にしすぎるとそと、一緒 に仕事をしている相手にその行動を不審がられることを懸念していたのだろう。

 ここにつれてきて欲しいと無理をいったわけは、外界と遮断されたあの家で何日も1人きりで置いておかれることが耐えられそうに無 かったからだ。ここにい れば少なくとも近くに誰かがいることになる。男に構って欲しくて無理を承知でつれてきてもらったわけではないのだから、少しくらい不自由な生活を強いられ ることになってもほおって置かれること自体は特に気になりはしなかった。それよりも訳もなくあの男にこの部屋に無駄に足を運ばれて、いつばれるかとハラハ ラするよりは精神衛生上良かったと言えよう。
 
 男の方もここにこなかったからと言って直弥のことを全く気にしなかったわけではないようだ。その証拠に一度だけここに食事を持ってきた祭に、直弥が食べ 終えるのを見計らうようにして時計を手渡すと『1時間したら起こしてくれ』と言い置き直弥の膝を枕に寝てしまい直弥を慌てさせたことがある。

 いつもながら強引なんその姿勢に一時ムッとはするものの、なぜか目の前にその寝顔に釘付けになった。よくよく考えてみれば男が自分 の前で、こんな風に無 防備な姿を晒すのは初めてのことだと言うことにも気付いたからだ。
 最初は部屋すら別々だった、目的は躯だけだとでも言うように気の済むまで抱くといつも部屋を出て行ってしまう……時々同じ部屋で寝起きするようなことも あるがそれもほんの最近のこと、それでも寝顔など一度も見たことが無かった。

 今までの二人の関係からすると、寝起きを全て共にするのは危険が伴うと警戒するのも男の考えとしてはしごく当然の事。その気持ちが 薄れてきているのだ。 それは良いことのように見えて、この関係を最初から良い物だと捉えることの難しい直弥の方にしてみれば、心中は決して平穏とは言いきれないに違いない。
 
 自分の膝を枕に寝息を立てている。少し面窶れしたその顔には、かみそりを当てる暇さえ惜しんでいるのだろうか、うっすらと髭も伸びていて雰囲気がいつも と違って見える。自分と二人でいるときですら、一変 の隙も見せまいと張り詰めた普段の男からは想像出来ないほどくたびれた姿だった。泊り込みで片付けなければ間に合わないほど急を要する仕事なのだ。夕べは 夜半過ぎてもこの部 屋に入って来た気配を感じることはなかった、多分寝る間も惜しんでやっている仕事中のつかの間の休息……。そう考えると今度は逆に、その穏やかな寝りの時 を守りたいという気持 ちも湧いて来るのだ。

 少しでも動くと目を覚ましてしまいそうで、直弥は言われた時間になるまで男の頭を膝に乗せたまま身じろぎも出来なかった。

 そんな風にして男が仕事に気を取られている間は、直弥からしてみると、誰かに邪魔されるわけでもなく必要以上の不安を強いられるわ けでもなく、今までで 一番穏やかな時間を過ごすことが出来たことになるのかもしれない。
しかし一旦それが済むと、仕事を手伝ってくれていた相手がここから帰ったとたんに、まるで溜まっていた二日分の鬱憤を晴らそうとでもするかのように、一緒 に入った風呂の中で待ちきれ ないと言いたげにに性急にことに及ばれてしまった。
 
 風呂に入れてやると言われた時点でまずいなとは思ったのだ。「たまには1人で入りたい」と言っては見たが無駄だった。トイレに行くことすら男の休憩時間 に 合わせてと、普段以上に不自由な状態をこの二日日間の間強られてしまった直弥にしてみれば、やっとその息苦しさから解放されて嬉しくもあったのだけれど、 そう思ったとたん行き着く暇も無く性急に求められてしまい、いささかうんざりしていた。
 しかし、こうなることを判ってた上でここに来ることを選んでしまったのは自分の方だ、いい子にいているとか、言いつけも守るとかそんな条件を出したのも 自分なのだから、強く断りきれるはずも無いし、また断ったとしても聞き入れてもらえないだろう事も判りきっていた。

「……もう、やだ」
 入る前に一度、湯船に入ってからもまたやられて散々鳴かされて、それでもまだ足りないと言いたげにそのままベッドのある部屋まで連れて行かれそうになり 思わずもらしてしまったその一言。この後も男の気の済むまで抱かれることになるのだろうと考えるとやはり気が重くもなる。『疲れちゃったよ』と掠れた声で そう呟いたら、眉を潜めて睨まれた。

「俺は全く足りてないぞ」
 案の定だ、お前に拒否権は無いんだぞと言いたげな顔をして男は直弥を見る。こばめばどうなるかわかっているんだろうなと言わんばかりのその態度に理不尽 さを感じても、無言で睨みをきかされると蛇に睨まれたカエルよろ しく何 もできなくなる。
 強く抵抗すれば逃げおおせるだろうと思うのは一度も恐怖を味わったことの無い人間の考え、実際はそれほど単純な物ではない。なにも出来ない自分自身を情 けなく感じるものの、こんなふうに出られるとどうしても躯が萎縮してしまう。男の態度があの頃にくらべ 穏やかになっても一度植え付けられた恐怖はそう簡単に拭い去れる物でもない、必要以上に傷つけられないようにと自分を守る方に意識が働いてしまうのも無理 もないことに違いない。

「直弥……」
嗜めるように名前を呼ばれ、恨みがましい視線で男を見つめてしまう。それでも再度腕を引かれて直弥は諦めたように男の後に従うしかなかった。

男は直弥をベッドのある部屋へと連れて行くと、その上で四つんばいになるように命じた。 しぶしぶとベッドの上に上がったはいいが、恥ずかしさが勝って中途半端な格好のまま戸惑いがちに後ろを振り向くと、子供を軽く嗜めるようにぺちっと尻をた たかれ躯が強張る。
「ぐずぐずしてるともっと酷い目にあうよ?」
そう脅されて直弥は仕方なしにもう一度前を向くと、さっきよりも僅かに尻を突き出す様な姿勢をとってみせる。

 「腰だけ上げるんだ。……そう、足をもっと開いて」
いたるところにまとわり着くような男の視線を感じ、その目の前で 恥ずかしい姿勢をとらされることに耐え切れずしばらく躊躇していると先ほどより強く尻をたたかれた。抗議するように軽く男を一瞥したが、それでも結局は 羞恥に染まる顔を隠すようにしてシーツに顔を埋め、命じられたとおりに腰だけを高く上げてみせる。 男は直弥の足元に顔を寄せるとおもむろに足の裏を一舐めした。
 「ひゃ、ぁっ……」
思っても見なかった場所にいきなり感じたぬめる舌先の感触に 驚きとも喘ぎとも取れぬ声が思わず直弥の口から漏れる、その反応に気を良くしたように男は今度は直弥の足を手に取るとその指先をゆっくりと口に含んだ。慌 てて足を引こうとするその動も許してもらえず、今度は指の間をゆっくりと舌で嬲られる。
 「や、や……ぁ…さと、し……それ、きもち、わる……」
 指を口に含まれたまま小さく笑われた、わざと直弥に聞かせるように音を立て、舐めながら『きもち良いの間違いだろ?』と揶揄される。 その舌先は今度はゆっくりと足へと移動した、ふくらはぎから腿へとなだらかな曲線を湿った舌先が這い回るように移動していく感じがなんとも言えず思わず腰 が跳ねる。柔らかな内腿に噛み付くように吸い付かれるたびに堪えきれない嬌声が零れ落ちる。
 
男はそのまま直弥の躯の中心の柔らかな部分を舌先や唇で堪能したあと、行く先を予感させるような動きでゆっくりと舌先を移動させて、そのまま窄まりへとた どり着くと、ふっと一息吹きかけてからそこを舌で大きくなめあげた。

「あっ、あっ……っ!!」
敏感な部分を嬲られて、また大きな嬌声が零れる、イヤだと身を捩り逃れようとしたがいつの間にかベッドの隅に追いやられるようにして逃げ場を失っていた。
敏感な部分を這い回る濡れた舌先、悦楽へと落とされる感覚はどう拭おうとしても拭いきれるものでもない、直弥に出来ることはただできるだけ声がもれないよ うに顔を強くシーツに押し付けて堪えるだけだ。なのに男はそれすらも許さないと言いたげに孔を指で左右に広げると舌先を中にもぐりこませてきた。

 「いやだ、やめて、いやっ!いや……さとし、お願い!!」
 「どうして嫌がる?」
男は嫌がる直弥の様子をむしろ喜んでいるように口元を緩めて、いっこうに行為を止めてくれる気配は無い。

 「そんなとこ、舐めちゃだめだよぅ」
「さっきちゃんと洗っただろ?」
 小さな子供が甘えるみたいに、やだ、やだよと舌足らずな口調の懇願をそんな風に諭される。問題はそんなことじゃないのだ、恥ずかしい のと、く すぐったいのと、気持ちいいのと色々な感覚や感情が全てないまぜになっておかしくなってしまいそうだ。 なのにその言葉とは裏腹にもっとと強請るみたいに腰を揺らめかせてしまう。男にはそれがはっきりとわかっているのだろう、逃げようとする直弥の躯を、その たび強く自分の方に引き寄せては同じ行為を繰り返す。
 触られる体中何処もかしこも全て性感帯になった気分だった。いつもより優しく肌に触れてくる指の些細な動きにさえも敏感に躯が反応し てしま う。

「やぁ……あ、あ、…だめ、そこ……い……」
強い刺激に翻弄されて、だんだん自分でも何を口走っているかわからなくなってくる、なのに、男はそれでもまだ感じ方が足りないと言うように直弥の敏感な部 分ばかりを執拗に攻め立てる、嫌がって身を捩れば、かえって腰を振って誘っているかのようで、そのたび『なんだ、もう我慢出来ないのか?』と揶揄された。
 今までのように、ただ一方的に欲望を満たしてくれればいいのだそうすれば何もかもを男のせいに出来るのに、最近の男はそれを許してく れない。 嬌声にすすり泣く声が混じる頃、男はやっと直弥のそこを解放した。
舐められて湿った窄まりがひんやりとした外気にふれて驚いたようにきゅっと孔が締まる。終わったのかとホッとしたのもつかの間今度は強引に躯を反転させら れて、足を大きく左右に割り開かされた。

先ほどまでの舌先の愛撫に翻弄されて、十分に反応している直弥のモノは先端から快感を示す雫に濡れそぼって震えている。男の目の前に普段は隠れているはず の欲望も何もかも全て晒され る、この恥ずかしさは何度味わっても慣れるものではない。そんな直弥の姿を視姦する男の絡みつくような視線を躯のいたるところに感じて更に中心に熱が集中 する。
男は直弥の腰を自分の膝の上に抱えあげると両足を肩に担ぎ上げ、中心の窄まりに自身の先端をあてがい、ゆっくりと己を直弥の中に埋め始めた。割り開かれる 衝撃に直弥の躯がわななく、先を僅かに入れただけで男はそれ以上動こうとはせず、肩にかけた直弥の足の片方を手に取ると足の指一本一本を丁寧に口に含み始 めた。

くちゅ……。くちゅり、と直弥の耳にも届くようにようにわざとらしく音を立てて、口内に含んだ足の指を舌に乗せ、転がされ、何度も執 拗に嬲られる。
「あ、や……ぁ……」
足の裏や指の間を這い回る舌の感触、指を口内に含まれるたびに、直弥はあえかな嬌声を漏らし躯を小さく震わせた。
「や……やっ、も……やめ……っ……」
「直弥は何処もかしこも敏感だな」
足を引いて逃れようとしても足首をがっちりと捉えられてかなわない
「やぁ!ぁっ、いじめ……いで。いじわる、しな……いでよぉ」
「誰もいじめたり、いじわるなんかしてないだろ?人聞き悪いな」
そう言って笑いながらまた指の間をなめられて、そのたびにビクッ、ビクッと大きく躯が跳ねる。

 今日の自分は絶対どこかおかしい、どうして男の一挙一動にこんなに敏感に反応してしまうのか。
 数日間、行為が途絶えたことなど今までにもあったはず。なのに、何が今までと違うと言うのか……。

 片方が終わると今度はもう片方を同じように舐められた、口に含まれしゃぶられるたびに声にならない声を上げて身を捩り、そのつどま るでその刺激と連動し ているように下の孔が体内にある男の物をきゅっと食い締めてしまう。
深々と中に穿たれて強く意識させられるわけでもない、でも確実に自分の中に男の存在を感じてしまう。もどかしい刺激。やめてと呟く言葉の裏に、もっと激し くと、望む気持ちも含まれているのは否めない。

「や、もう……やだよ……智史、お願い」
「何?」
「どうしてだよ……」
いつもみたいに、してくれればいいのだ、こちらの気持ちなどお構いなしに、有無を言わせぬ強引で奪うようなセックスを、余計なことなど考えなくてすむ様 に。
なのに、今日の彼はいつもと違うのだ。一つ一つ丹念に確かめるようなゆるい刺激を与えながらこちらの反応を見て愉しんでさえいる。言わせたいのだ、直弥に 最後の一言を。

「ちゃんといわなきゃわからないだろ?」
男は憎らしいくらいに冷静な顔でそう言って笑った。

「智史……欲しいよ……」
埋めて欲しい、熱くたぎる昂ぶりで体内を蹂躙して欲しい。直弥の心を裏切るように躯は男を求めている。それがわかっているからこそ恥ずかしくて言うのがイ ヤで、蚊の鳴くような小さな声でやっとそれだけ言葉にする。それでもそう呟きながらまるで急かすように自然と腰がゆれてしまうことも、もう止めようがな かった。
「何が?」
「嫌い、智史なんか大嫌い……いつも……そうやって、おれのこと……いじめて……っ」
時折鼻を小さくすすり上げながら、今にも零れそうなほどの涙で瞳を潤ませて、恨めしげに見上げる直弥の顔をみて男はどこか悪戯っぽい笑を浮かべ ている、 こちらが言いたいことなど、本当はちゃんと判っているくせに男はまたそうやって問いかける。いつもこんな風に意地悪だけど、今日は更にひどかった。

 一体自分が何をしたというのだろうか、言いつけも守って大人しくしていた、かまってもらえないと文句を言って困らせるようなことを した覚えもない男を怒 らせるようなことは何一つしていないつもりなのに、その結果が今の状態と言うならあまりにも酷すぎる。なのに反撃する言葉すら浮かんでこないのが悔しい。

「じゃぁ、直弥が自分でしてごらん」
「じぶんで……?」
「俺のやり方じゃ気に入らない。だから嫌なんだろ?」
「……」
「だったら、自分で入れて、自分の良いように動いてごらん、出来るだろ?」

そう言われて体勢を立て直し、しぶしぶと男の上になったのは良いが、自分から進んでするのはやはりどこか気恥ずかしくて抵抗を感じた めらってしまう。ぐず ぐずとなかなか行動に移さない直弥の態度に焦れたの か、先を促すように昂ぶりをきつ握られ、先端の割れ目に強く爪を立てられて直弥は小さな悲鳴をあげた。
「い……いたっ……」
「 焦らしてるのか?」
 詰問するような問いかけに慌てて大きく首を振った。焦れて抑制の効かなくなった男にこれ以上酷い事をされてはかなわない、ここまでく れば途中 で止められるはずもないと覚悟を決めるように軽く深呼吸をした後、直弥はもう一度自分の窄まりに昂ぶった男のモノをあてがうと、そこに体重をかけるように して腰を落としていく、男の上になり自分から受け入れることは初めてではないが、やはりなれない体勢ゆえに少し苦しい。狭い器官をこじ開けるようにして、 徐々に中を征服される強い圧迫感。それでも風呂の中下の行為で十分に柔らかくなっていたためか一番太い部分を通り過ぎてしまえば、あとはあっけないほど簡 単にその侵入をゆるしてしまった。

男の物を全て納め終わると直弥は深呼吸するように大きく息を吐き、何かを問いかけるように下になる男に視線を落とした。

「……俺が、直弥に抱かれてるみたいだな、どうだ直弥、俺を食った感想は?」
視線を合わせると男はそう言って笑い、直弥の躯を支えるように添えていた手で脇腹を下からすっとなで上げた。
小さく声を上げ、刺激で自然と腰が揺れる、中に入った男のモノを思わず喰い締めて己の中のその存在をことさらはっきりと感じ取り躯が疼いた。

「動いてごらん、ナオ……ゆっくりだ」
言葉で促されるままに、男の上で躯を上下させてみる。
「―― ん……っ……ぁっ……」
 中を擦られるたびに出そうになる声を両手で塞いで堪えようとすると、他の行為がおろそかになる。その たび急かすように揺さぶられ突き上げられ鳴かされる羽目になる。終いにはそのぎこちない動きに焦れたのだろう、余計なことをするなと言いたげに、両手を1 つに戒められて、男の腹の上に強引に縫いとめられてしまい口を塞ぐこともかなわなくなった。

こうなるともう体裁など構ってはいられない。一時も早く終わるように行為に専念するしか術はない。躯を浮かせたときに内(なか)を埋 めていたものがズルリ と抜け落ちてゆく感触と、降ろしたときにまた埋められる圧迫感に何度も息が詰まりそうになる。繋がっている 部分にできるだけ意識を集中させ ぎこちないながらも懸命に奉仕する己の姿に、欲情を強く滲ませた視線が絡みつく。
全身を嘗め回すようなその視線に捉えられて、あろうことかまた躯が火照 る。しかし今はそんなことなどかまってはいられなかった、どうやれば良くなるのかなどわからないまま、半ばや けっぱちの状態で抜き差しを繰り返して男の上で乱れて見せる。

「き、きもちいい?智史……」
男自身が気持ちよくなっていようがいまいが直弥にとっては本当はどうでもよいことのはずなのに、視線が合った瞬間なぜかそう問いかけてしまい、その後でま た酷く恥ずかしくなる。男はそれを聞くと軽く口元を綻ばせて、熱の篭った吐息混じりに、あぁと呟いた。

「今日の直弥はすごいな、もうこんなにぐっしょりだ」
立ち上がり濡れそぼる幹を手の中に包み込むようにして何度かゆるく扱かれる。
「やだよ……言わな…いで……」
まるで、ひとつひとつ確かめるように暴かれる、男のいうとおりなのだ、もう既に何度か達していると言うのに、気付けばまた同じように躯が反応している。腰 を上下に揺らめかせるたびに、ぐちゅ、ぐちゅと繋がった部分からあがる濡れた音に自分自身が更に煽られる。 拙い直弥の奉仕にじれるのか、動きに合わせるようにして時折リズミカルに男が下から突きあげる。そのたび深くなる繋がりに直弥は喉元を大きくのけぞらせ た。
たった二日触れられなかっただけだ、それだけでいつもよりもずっと感じやすくなっている気がしてしまう。これではまるで、足りていなかったの はお前のほうだろう?と言割れている様で直弥はますますいたたまれなくなった。

「……あっ……や…ぁ……ん……っ」
よそ事を考えて止まってしまった行為を急かすように、脇腹をすべる指の感触に声が漏れる。
先端の割れ目に爪をたてられて、痛みに躯がこわばる。

「や、そ…んなとこ……さわっちゃ、やだよぅ……」
もうでる、と思わず言ったら今度は掌の中に強く握りこまれて、射精をせき止められまた喘ぐことになる。

「さとし、ひどい……」
「1人でいくのはダメだぞ。ほら、もう少しだ頑張れ」
頑張れといわれても、もう何をどう頑張ればいいのか直弥にはわからない状態だ。なのに、男はそんな直弥にもっとだと先を促す。酷いと思う、優しいと 気を許し始めれば、その考えは間違っていると言うようにこうやって自分を泣かせて喜ぶ。
『酷いよ』と何度も呟きながら縋るような瞳で男を見た。少し口元を緩めて、どうした?と問いかける優しげな眼差し。それでもそんな時でさえもういいよとは 言ってくれないのだ。男を満足させないと終わ りは無いのだと本能がそう指し示すように、直弥はまた行為を再開させた。

荒く息を弾ませてひたすら行為を繰り返す、躯を支えるように添えられた手の平と肌が触れる感覚さえも刺激となって直弥を襲う。

「…ぁ……も…ゃ……ぁっ、ぁ……っ……」
うわごとみたいに小さな喘ぎをいくつも零しながら抜き差しを繰り返す、躯はもうとっくに限界を超えている、なのにそれでも解放を許してもらえず過ぎる悦楽 に苦しめられる。
これ以上やったらもう壊れると思ったその時だ、何を思ったか男はそこでいきなり握っていた直弥のモノから手を放した。
離されたと同時に吐精感が高まる。ぐっと腰を降ろした瞬間、内を男のモノでえぐられその強い刺激に即発されて、限界ぎりぎりまで張り詰めていた昂ぶりは あっけなく欲望を迸らせ、男の腹や胸を汚した。
解き放たれた開放感と急激に襲ってくる疲労感で崩れ折れそうになる直弥の躯を男の腕が支えてくれる。

「あっ……!」
乱れた息に肩を大きく弾ませながら視線を男に移した直弥が驚の滲ませた声を上げる。解放された瞬間飛び散った飛沫は胸の辺りだけでなく勢い余って男の顔の あたりにまで及んでいる。
男はさすがにそこまでは想定していなかったのだろう、一瞬だけ驚きに目を見開いた後、小さく噴出し、さもおかしそうにクククと笑い始めた。
「ご、ごめん、ごめんなさい」
慌ててその飛沫をぬぐおうとした直弥の手を掬うように握ると、男は指の根元からゆっくりと舌を這わせてその指先を口内に包み込む。

「元気だね直弥、さっき風呂で出したばっかりなのに」
「だって、だって……それは、智史が……いじわるするから……」
揶揄されて、首筋や耳元まで赤く染まっているのが薄闇でも確認でそうなほど、目に見えてうろたえる直弥を見て男がまたおかしそうに笑う。

「舐めて」
「え?」
「舐めてきれいにして、自分のだろ?」
ごくりと喉が上下する、直弥は男の上から降りるとゆっくり上体を倒して言われたように躯の上にとびっ散った飛沫を舌先でそっと救い始めた。舌先が肌を掠め るたびにくすぐったいのか笑いを堪えるような声が聞こえる。

舐めとるたびに口内に広がる青臭い欲望の味。
同だ、同じ味がする……自分も、男も、同じ人間と言う証
こんなときに考えることじゃないのかもしれない、でもそんなことをふと思った。

「直弥、俺のこと煽ってるだろ?」
男のその一言で気分を害したと言う表情をして直弥の動きが止まった。
「や、やだ……もう、いや。こんなことなんてしたくない!」
そういうと直弥はきゅっと口を一文字に結んだまま男の上に覆いかぶさるようにしてうつぶせになり、そっぽを向いてしまった。今更弱音を吐いたところで赦し てくれないのは判りきっ ていたが、言わずにいられなかった。

「ナオ……?」
突然行為を中断してしまった直弥の態度をいぶかしむように男が名前を呼ぶのにも答えないでいると、指先で脇腹をスッとなでられる。
零れそうになる声は唇をかみ締めることで何とか堪えたが、その刺激に反応し僅かな躯の震えは隠しようがなかった。

「どうした?こっち向いてごらん」
「いやだ、智史。嫌い……」
目を合わせたら全て見透かされてしまう、自分の内に潜む欲望とこの想いを。知られたくないのだ、今はまだ絶対に。

 きらい、きらい、だいきらい

 自分の言い分を聞き入れてもらえないことで駄々をこねる小さな子供のように、同じ台詞を繰り返す直弥を今度は宥めるようにして男の 指が頭をなでる。
 嫌いだなんて嘘だ、その言葉で自分の本当の気持ちを誤魔化しているだけ。だから、そんなに優しい声音で名前を呼ばないで欲しい。傷つけたような気がして 胸が痛いから。

 本当は傷つけたいわけじゃないのに、傷つけたような気がして辛くなるから……。





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