何となく幸せ
夕暮れにはまだ少し早い川沿いの堤防の上を、二人肩を並べて帰る……これはいつもの帰宅パターン。

あの日から二人の仲は同じクラスの仲間達から「今までより親密になった」とか「いや、晃平がさらに正巳に厳しくなった」とか色々好きな事を言われているけど、一応本当の事はまだ誰にも知られては無いらしい。

正巳はそんな話を耳にするたびに妙に心臓がドキドキしてしまうのだけれど、当の晃平はそんな風ちょっかいを掛けられても、「気のせいやろ?」と一笑で終りの図太さだ。
二人が生まれてから今までずっと一緒の腐れ縁の幼馴染ということは皆周知の上の事なので、それ以上突っ込もうとする奴が今まで現れないのが正巳にとってはせめてもの救いなのだけれど……。


「コンビニで豚まん買って帰ろうや」
と晃平が言い出したので、途中コンビニに立ち寄った。

こういう時に晃平の決断に迷いは無い、買うと決めたものがその場に行ってから別の物に変わることは本当に稀だ、迷うのは優柔不断の正巳の方、行く前は買うものを決めていたとしても、いざその場に行くと色々な物に目移りしてしまい中々決める事が出来ないのだ。
この日も、立ち寄った先のコンビニで見たソフトの新メニューに目を奪われたのは正巳だった。


「正巳、こんな寒い日に、よぅそんなもん食べれんなぁ……」
散々迷った挙句、結局そのソフトクリームを選んだ正巳に呆れた顔で晃平が呟く。

「えぇやん、俺の勝手やろ?」
まだ吹く風が少し冷たい店外で心持身体を縮めるようにしながらも、ソフトを頬張る正巳を見ながら晃平がふっと双眸(め)を細めた。

「……な、何?」
晃平の優しげな視線を視界の端に止めて正巳の心臓がとくとくと高鳴り始める。
「いや……なんや、かわいいなぁ……って」
「かわいいってなんやねん、人を子供みたいに!」
晃平の言葉にからかわれたと正巳が頬を膨らませて不貞腐れる。

だからそう言う所が……と晃平は言おうとして止めた。
正巳はこんな風に自分の一言一言を真に受けてムキになるのがかわいいのだ、教えるとからかう楽しみが減る。



「な、味見させて、味見……」
「なんや、晃ちゃん、最初ッからそのつもりやってんな、俺のソフトやのに!」

「けち臭いな正巳……一口だけやん」
晃平に嫌味ったらしくそう言われて、たった一口をケチったばかりに後々まで色々言われては叶わないと思った正巳がそれでも少し口を尖らせたまま、しぶしぶソフトを晃平に向かって突き出すと、晃平はソフトではなくとがらせた正巳の唇を自分の唇で塞いだのだ。
そう来るとは思っていなかった正巳は驚きのあまり手の中からソフトをすべり落としてしまった。


「な、何すんねん晃ちゃん!!」
「何って、こっちの方が旨そうやったから……」
「うま、うま、旨そうって、こ、こんなとこであほちゃうか!?」

おたおたしてる正巳の態度とは対照的に、晃平の態度はあくまでも冷静で、正巳の慌てぶりを楽しんでいる感すらある。

「ほな、こんなとこやない所でしよや」
晃平はそう言うと正巳を見て嬉しそうにニッコリと笑った。

「こ、晃ちゃんは最近そればっかり……」

「だって俺正巳のこと好きやもん」
ストレートにそう告げられて正巳の顔がますます赤くなっていく。
それを見た晃平の双眸(め)がまた、ふっと優しげに細められた。

あぁ、またや……

そんな風に優しい目で見られるとドキドキする……

正巳は昔から晃平のそんな視線にとても弱いのだ。
晃平が自分を好きだということに気付かないまでも、その優しい眼差しだけは気付いてた。
それが自分だけに注がれる特別な視線なのだということも……。

あぁ、なんか俺……もしかしたら自分が気づいてなかっただけで、むかしっから晃ちゃんのこと好きやったんかも……
改めてそんな事にまで気が付いて更に意識してしまうことにもなったのだけれど……。

2005/3/1

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